『その扉をたたく音』瀬尾まいこ
音楽を通して、人との出会いや別れに触れ、自分自身としっかり向き合おうとする物語。
ギターやサックス、ウクレレ、歌など、いろんなジャンルの音楽が出てきます。
作中に出てくる楽曲も、「これ知ってる!」というのもあれば「聞いたことないから調べてみよう」と思えるものもありなかなか楽しい。
音楽との関わり方も登場人物によってさまざまで、音楽をやっていた私には、とても考えさせられるものがありました。
この作品では、さまざまな「対比」が描かれているのが印象的でした。
無職と働く人。
若者と高齢者。
家族と他人。
金持ちと貧乏人。
穏やかさと激情。
たくさんの対比があるけれど、どれも共通する思いがあったり経験があったり。
人が感じる物事に、「立場」って関係ないのかなと感じました。
舞台が老人ホームということもあって、人生がテーマになっているお話で、いろんな人の生き方が垣間見えるのが面白かったです。
この作品を読んでいると、多方面に目を向けるということが大事だということに、改めて気付かされました。
自分や他人を内側から見ることと外側から見ること、どちらも常に行うのが大人になるということなのかもしれないですね。
この作品を読むのにおすすめなのは、何かしないといけないけれど何をすればわからない人や、なんとなく時間を過ごすのに後ろめたさを感じている人。
この作品を読むと心が落ち着いたり、一歩踏み出したくなったりすると思います。
著者の他の作品で、『そして、バトンは渡された』も気になっています。
本屋大賞を受賞していて、映画化もされていました。
私は小説が映像化されてしまうと、原作を読む気が削がれてしまうことも多いのですが、『その扉をたたく音』の作風がとても読みやすかったので、別作品にも手を出してみたくなった次第です・・・。
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